あなたにも運動をした日には寝つきが良くて朝までよく眠れたという経験はあるのではないでしょうか。
体が疲れて眠れたというのもあるかもしれませんが、それ以外にも運動には睡眠の質を上げる効果があります。
ただ逆に、運動をすることが睡眠の妨げとなってしまい、寝つきが悪くなったり、睡眠の質を落としてしまうこともあります。
今回は睡眠の質を上げてよく眠れる運動のやり方についてご紹介してきます。
運動するとよく眠れる2つの理由
運動のやり方に入るまえに、運動がどのように睡眠の質を上げてくれるのかを見ていきましょう!
運動によって睡眠が改善される理由には大きくわけて「深部体温の低下」と「コルチゾールの分泌が減少」の2つがあります。
それでは順番に見ていきましょう。
深部体温が低下
お風呂にゆっくりと浸かったり、温かい飲み物を飲むと気持ちよく眠りにつけたという経験はありませんか?
一見、「体が温まるとよく眠れる」というように思われがちですが、これは半分正解で半分間違いです。
寝つきがよくなったり、ぐっすりと深い睡眠に入るためには、体の中の体温である深部体温を下げる必要があります。
体を温めるのが良いのは、いったん深部体温を上げたほうが、その後に深部体温がしっかりと下がるからです。
運動には深部体温を上げる効果があるので、その後の深部体温の低下がスムーズになり寝つきや睡眠の質が上がります。
コルチゾールの分泌が減る
コルチゾールはストレスホルモンと言われており、ストレスを感じると分泌される脳内物質です。
ストレスホルモンと聞くと悪者のように聞こえますが、正しくはストレス対応ホルモンで、私たちがストレスに耐えれるようにサポートしてくれる味方でもあります。
コルチゾールは、朝から昼にかけて増え、昼から夜にかけて減少するようになっています。
コルチゾールが分泌されることで日中ストレスに耐えながら活動的に動けるようになり、コルチゾールが減ることでリラックスした状態で睡眠に入れるようになります。
ただ、慢性的にストレスを抱えていたり、夜になってもストレスを感じる環境に身を置くとコルチゾールはずっと出たままになります。
こうなると、日中は味方であったコルチゾールが、夜になると牙をむいてきます。
夜になってもコルチゾールが減少しないと、体はまだ昼だと勘違いして睡眠の準備に入ろうとしません。
そのため夜遅くになっても眠気が訪れず、眠れたとしても夜中に何度も目が覚めやすくなります。
このようにストレスは睡眠にとって大敵です。
そこで、ストレスを抑えてコルチゾールを下げるのに効果的なのが運動です。
中程度の有酸素運動にはコルチゾールの分泌を減少させる働きがあることがいくつもの研究でわかっています。
しかも運動習慣のある人は、ストレスを感じる場面に出くわしてもコルチゾールの値があまり増えないという結果がでています。
つまり、運動を定期的に行っていると、ストレス耐性がついて嫌なことが起きてもストレスを感じにくくなるということです。
このように、運動をするとよく眠れるようになるのは、「体が疲れたから」という理由だけではなく、深部体温とコルチゾールをコントロールする働きが大きいです。
では、深部体温とコルチゾールを意識した、よく眠れるようになる運動の方法について見ていきましょう!
睡眠改善!よく眠れる運動習慣
それでは睡眠の質を上げてよく眠れる運動はどうすればよいのかを見ていきましょう!
中程度の有酸素運動が睡眠の質を上げる
中程度の有酸素運動(少し息が上がり、じんわり汗ばむ)を30分程行うと、寝つきがよくなってよく眠れるようになります。
私の場合は毎日仕事帰りにランニングマシンを30分ほど漕いでいます。
有酸素運動は、水泳、自転車、ジョギングなどでも良いですし、これらがキツイ場合は歩幅を広めにした早歩きから始めてみるのも有効です。
運動の頻度については、必ずしも毎日する必要はありません。
30分ほどの有酸素運動を週に2~3回続けることで、コルチゾールの過剰分泌が抑えられることが今の科学では唱えられています。
もちろん毎日できる場合はそれに越したことはありませんが、「毎日やる!」と決めてできなかったらそれ自体がストレスになるので、気楽にムリなく始めてみてください。
運動する時間帯
睡眠を改善するためには運動をする時間帯はとても大切です。
中程度の有酸素運動は睡眠を改善してくれますが、時間帯によっては逆に眠れなくなってしまいます。
深部体温のところでも説明しましたが、寝つきが良くなってぐっすり眠れるのは、体が温まるのではなく、深部体温が下がるからです。
体が温まると眠れると考えている人がやりがちなのが、就寝前の運動です。
人は体温が上がると覚醒状態になり、体温が下がると眠たくなるようになっています。
就寝前の運動は寝つきをよくするどころか、かえって眠れなくなくなり睡眠の質を下げてしまいます。
運動後に深部体温が下がるまでには早くても3時間近くかかります。
そのため運動をする場合は会社帰りや夕食前、遅くとも夜の8時までには終えるようにする必要があります。
もし夕方に運動をするのが難しい場合は、朝にすると更に有効です。
アパラチア州立大学の研究によると、午前7時、午後1時、午後7時に運動するグループの睡眠を調べたところ、午前7時に運動したグループがもっとも寝つきがよく、眠りも深かったそうです。
朝の運動はやコルチゾールの分泌だけではなく、睡眠物質メラトニンの原料となるセロトニンの分泌が増えて、日中活動的に動けるというメリットもあります。
逆効果!眠れなくなる運動習慣
先ほどお伝えしたように就寝前の運動や、夜8時以降の運動は逆に眠れなくなってしまいます。
また夜にハードな筋トレなどをすると深部体温が上がりすぎて、下がるまでに時間がかかります。
さらに覚醒作用のある交感神経にスイッチが入ってしまい目が覚めてしまいます。
ただ勘違いしないでほしいのが、筋トレが悪いといっているわけではありません。
筋トレを運動習慣に取り入れているなら継続すべきです。
なぜなら、有酸素運動だけよりも、有酸素運動+筋トレを行う方がストレス耐性がしっかりとつくことが科学的にもわかっているからです。
ただ、そんな素晴らしい筋トレも行う時間によってはデメリットに働くことがあるということは覚えておいてください。
できるだけ筋トレは午前中が望ましいですが、夜しかジムに行けないという場合は、できるだけ早い時間帯に終わるように心がけてみてください。
よく眠れる運動まとめ
今回は運動をするとなぜよく眠れるようなるのか、どういった運動が睡眠の質を上げるのかについて説明してきました。
最後に今回の内容をまとめておきます。
今回のポイント
<運動するとよく眠れる理由>
- 体の中の体温を下げて、寝つきが良くなり深い睡眠に入りやすくしてくれる。
- 夜に増えると睡眠の邪魔をするコルチゾールの量を減らしてくれる。
- ストレスは睡眠の大敵だけど、運動を続けることでストレス自体に強くなる。
<よく眠れる運動>
- 30分ほど中程度の有酸素運動(少し息があがり、じんわり汗ばむ)を週に2~3回以上。
- 夕飯前など遅くとも就寝3時間前までには終わらせる。(朝にできれば更に良い)
- 筋トレを組み合わせるとストレス耐性がより強くなる。
<眠れなく運動>
- 就寝前の運動(深部体温は下がるまでに時間がかかる)
- ハードな運動(交感神経が働いて目が覚める)
運動習慣がない方は、歩幅を広めにとった早歩きでも有効です。
毎日やる必要はないので無理のないペースで少しずつ始めてみてください。
実際にやればわかりますが、快眠にとって運動はとても強い味方になってくれますよ♪
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