1憶総ストレス社会と呼ばれるほど、現代人の大半がストレスに悩まされながら生活を送っています。
しかも数々の研究結果により「ストレスは脳を委縮させる」ということが科学的に証明されています。
この記事では、どのようなストレスが脳を委縮させ、脳が委縮することで私たちにどのような影響を与えるのか。
また脳の萎縮の予防、回復するにはどうすれば良いのかを紹介します。
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なぜストレスで脳が委縮するのか?
まずストレスとは一言にいっても種類や大きさは様々です。
多くの方がストレスと聞くと、人間関係、仕事関係、将来の不安などを思い浮かべると思います。
ただ、トイレを我慢するのも、空腹を感じるのも、歩くという動作すらも脳からすれば立派なストレスです。
本来ストレスは脳を強くする
本来ストレスとは、ある行動を促すために表れて、その行動をとることで解消されるようにできています。
例えば、お腹が痛くなれば脳はトイレにいくように促してきます。
そして用を済ませるとお腹の痛みはなくなりストレスも解消されます。
お腹の痛みが消えたあとに、何度も思いだしてイライラしたり不安でたまらないという方はいないですよね。
また一度経験していると、次に腹痛が訪れたときに「前回は5分我慢できたし、今回もそれくらいなら大丈夫そうだ」と、前回より冷静に対応できるようになります。
よく脳は筋肉にたとえられます。
筋肉は重たい物を持ち上げると傷つきますが、修復する際には傷つく前よりも筋肉が強くなる性質があります。
これは、次に同じような状態になったときに難なく対応できるようにするためで。
脳も筋肉と同じで、ストレスを受けると脳細胞に傷がつきます。
そして回復する過程でストレスを受ける前よりも脳細胞が強くなりストレス耐性を強化してくれることがわかっています。
慢性ストレスが脳を委縮させる
本来であれば脳を強くしてくれるストレスですが、現代人の多くが抱えるストレスは逆効果に働きます。
先ほどトイレの例であげたように、ストレスはある行動をとると解消され、さらにストレスに強くなる特徴があります。
大昔の人間の大きなストレスは、食料の確保と獲物から逃げることです。
どちらもストレスが解消されたあとにまで悩み続けるものではありません。
ただ、現代人が抱えるストレスの大半は、人間関係であったり、仕事や将来の不安といった社会的ストレスによるものです。
仕事で上司に怒鳴られてイライラしても、上司をぶん殴ることはできません。
漠然とした将来の不安は、今何か行動をしたからといってスッキリと消えるものでもありません。
こうした社会的ストレスは、原因を解消しづらい上に気が付くとそのことばかりを考えてしまい、慢性的なストレスになりやすい性質があります。
しかも脳は目の前で起きていることと、想像を区別できません。
そのため、嫌なことを思い出したり、嫌なことを想像するだけでも現実に起きているとき同じように脳内ではストレスホルモン「コルチゾール」が分泌されます。
このコルチゾールの過剰分泌こそが脳を委縮させる原因です。
先ほど脳は筋肉に例えられるといいました。
筋トレをする方ならわかると思いますが、筋肉を強くしたければ毎日ハードな筋トレは逆効果です。
筋トレをする間隔が短いと筋肉が回復する時間が足りず、ただひたすら筋肉は傷つけられて委縮していきます。
脳もこれと同じで、常にストレスにさらされていると脳の神経細胞は傷つく一方で回復するタイミングがありません。
結果、神経細胞は死滅してどんどん脳が委縮することがわかっています。
ストレスによる脳委縮の影響とは?
では、ストレスによって脳が委縮すると私たちにどのような影響があるのでしょうか?
ここでは認知機能と精神面でどのような影響があるのかを紹介します。
認知機能が低下する
ストレスにより委縮する脳の部位は、「海馬(かいば)」と「前頭前野(ぜんとうぜんや)」と呼ばれる部位です。
「海馬」は記憶や学習能力を司る役割があり、海馬が委縮すると物覚えが悪くなったり、物忘れが多くなったりします。
また「前頭前野」は記憶、学習、感情などを司る脳の司令塔です。
前頭前野が委縮すると、思考力、判断力、記憶力、集中力、コミュニケーションといった人間が人らしく生きるために必要な機能が低下します。
このようにストレスによる脳の萎縮は認知機能を低下させて、勉強や仕事のパフォーマンスだけではなく、日常生活や社会生活を困難にしてしまいます。
ストレスに弱くなる
前頭前野が委縮すると、感情のコントロールや思考力が低下して益々ストレスを上手く処理できなくなります。
つまり、どんどんストレスに弱くなるということです。
するとコルチゾールの分泌が増え続け、脳の萎縮が加速するといった負のスパイラルに陥ります。
この状態が続くことで認知機能や記憶力がますます低下し、うつ、心疾患、頭痛、体重減少、睡眠障害といった症状に結びつきます。
では、委縮してしまった脳を回復する方法はあるのでしょうか?
答えは、イエスです!
これまで脳細胞はある一定の年齢を超えると死滅する一方だというのが定説でした。
しかし現時点では「脳は大人であっても成長する」というのが常識となっています。
つまり、委縮した脳は回復できるし、さらにはパワーアップさせることも可能だということです。
ストレスによる脳萎縮を回復するには?
現時点でストレスによる脳委縮の回復にもっとも効果的と言われているのは「運動」です。
そのなかでも定期な有酸素運動が委縮した脳を回復させ、さらには脳をアップグレードさせるのに効果的です。
運動が脳の成長や回復に効果的なのは、BDNFという物質の分泌を促す効果があるからです。
BDNFとは簡単にいうと、脳の交通整理や工事をしてくれる物質です。
なぜ運動がBDNFを増加させるのかはハッキリとはわかっていませんが、BDNFが増えることで脳細胞が新しく作られ、脳委縮を回復する効果が期待できます。
運動と聞くと抵抗を感じる方もいるかと思いますが、週に2~3回、少し息が上がる程度の早歩きを30分ほどするだけでも効果的だと言われています。
まずは普段の歩くスピードを少しあげるところから始めてみてください。
すぐにできる!ストレスによる脳委縮を予防するには?
脳の萎縮を回復するのはもちろん大切ですが、委縮しないように予防することはもっと大切です。
運動にも予防の効果はありますが、ここでは運動意外の方法について紹介します。
睡眠不足の解消
ストレス同様に睡眠不足も脳を委縮させる大きな原因の一つです。
日本人は世界主要国29ヶ国のなかで韓国に次いで2番目に睡眠時間の短い国であり、国民の6割は睡眠不足だと言われています。
睡眠にはストレスを緩和する効果もあるので、忙しい人ほど睡眠を見直しましょう。
睡眠の見直し方法については別記事「【完全版】睡眠の質を上げる方法大全!人生が変わるハイパフォーマー睡眠!」で徹底解説していますのでご覧ください。
ちなみにストレスが多い人は寝つきが悪く深い眠りに入りにくいです。
ここでも役にたつのが運動です。
運動には寝つきを悪くするストレスホルモン「コルチゾール」の分泌を即効で抑える働きもあります。
マインドフルネス瞑想
一昔前までは瞑想と聞くとスピリチュアルなイメージを思い浮かべる方が多かったと思いますが、今では科学的に脳への好影響が証明されています。
アップルやGoogle、Yahoo!やFacebookといった企業でも、研修としてマインドフルネス瞑想を取り入れているほどです。
マインドフルネス瞑想は脳の萎縮にも効果的です。
マインドフルネス瞑想をする人とそうでない人の脳を調べたところ、特に記憶や学習機能をつかさどる海馬の密度が前者の方が多かったそうです。
また、マインドフルネス瞑想をするとストレスホルモン「コルチゾール」の分泌が減少し、ストレスを感じにくい脳に変わります。
なんだか難しいイメージがあるかもしれませんが、一日10分を8週間ほど続けるだけでこうした効果が表れるようです。
マインドフルネス瞑想については別記事で紹介する予定です。
ストレスをためないテクニック
睡眠やマインドフルネスといった根本的な部分にアプローチするのと同時に、今目の前のストレスを上手くかわすのもとても大切です。
タケラボではストレスを交わすテクニックについても紹介しています。
長期的な対策と短期的な対策の両方を使いながらストレスに対処していきましょう。
ストレスで脳を委縮させないために
今回ご紹介したようにストレスは本来であれば脳を強くしてくれる働きがありますが、現代人特有の慢性ストレスが続くと精神面だけではなく、脳の神経細胞を死滅させて構造自体を変えてしまいます。
ストレスが当たり前になってしまっている現代社会ですが、当たり前だと思ってそのまま放置せずに、今回ご紹介した内容を参考にストレスの軽減に努めていただければと思います。
タケラボでは他にも生活に役立つ情報を紹介していますので、よければ他の記事もご覧ください。