この記事では研究結果をもとに、睡眠が脳機能に与える影響についてわかりやすく紹介します。
仕事や勉強を頑張るために睡眠時間を削る方は多いかと思いますが、記事を読み終える頃にはきっと考えがガラッと変わりますよ!
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睡眠が脳機能に与える影響
早速ですが睡眠が脳に与える影響を見ていきましょう!
日本人の約40%の脳が徹夜状態
ペンシルベニア大学とワシントン大学によって睡眠時間が集中力に与える影響について調べた研究があります。
別記事「睡眠時間が集中力に与えるデータが驚愕!日本人の約40%が徹夜状態と同じ」で詳しく説明しているので、ここでは結果だけ紹介します。
研究によると、6時間睡眠を10日間続けると集中力の低下によるミスが400%も増加したそうです。
そのほかにも記憶力や思考力、注意力といった認知機能が低下し、運動神経の低下もみられたようです。
ちなみに6時間睡眠を10日間続けた状態は、24時間徹夜して起きている状態とほぼ同等だと報告されています。
そして、平成29年度の厚生労働省の睡眠調査によると、日本人の約40%の平均睡眠時間は6時間以下となっています。
また先ほどの研究では、被験者自身は脳のパフォーマンスが落ちていることに気づいていなかったとのことです。
つまりこの研究から言えることは、日本人の4割の脳機能は徹夜レベルまで落ちているけど本人はそれに気づいていないということです。
逆に、睡眠を見直すだけで本来あなたがもっている脳のパフォーマンスを発揮できるということです。
19時間寝ないだけで脳はほろ酔い状態以下
2000年のWilliamsonとFeyerの研究では、17〜19時間ずっと起きているだけで反応速度が50%も減少したそうです。
これは血中アルコール濃度0.05%の状態、いわゆる「ほろ酔い状態」よりもパフォーマンスが悪いことを示しています。
24時間睡眠を取らない状況ではさらにパフォーマンスが低下して、血中アルコール濃度0.10%と同じ状態になります。
何かを頑張ろうとすると睡眠時間を削る人が多いため、3~4時間の短時間睡眠の本などがいくつも出ていますが正直お勧めしません。
科学的には慢性的な睡眠不足の影響は蓄積し、同じような結果になると言われています。
ちなみに、遺伝子によって6時間未満でも健康を保てる「ショートスリーパー」なる人たちがいるのも事実です。
ただ、ショートスリーパーの遺伝子を持つのは10万人に4人ほどと言われるているので、あなたがショートスリーパーである可能性は限りなく低いです。
睡眠で記憶の定着が40%アップ
睡眠と覚醒ではどちらが記憶の定着に役立っているのかを調べた研究では次のような報告がされています。
研究では被験者を次の2つのグループにわけて、口頭で伝えたさまざまな情報を8時間後にどれだけ覚えているのかを調べました。
- 8時間寝て過ごすグループ
- 8時間起きて過ごすグループ
その結果、8時間寝て過ごしたグループは新しい情報の多くを脳に定着させることができ、起きていたグループではほとんどの情報を忘れていたそうです。
これまでも真偽を確かめるために同様の実験が何度も繰り返されてきましたが結果は同じです。
そして驚きなのが効果の大きさです。
たいていの実験では、睡眠を挟むことで記憶の定着が20~40%も上昇するという結果がでています。
つまり、試験前に徹夜で勉強しても本番までにはほとんど忘れています。
逆にキリの良いところまで勉強してグッスリと眠った方がテストの成績が良いという研究結果も報告されています。
新しい情報を記憶する容量が増える
睡眠が記憶に与える影響は記憶の定着だけではありません。
日中たくさんの情報にさらされていると、脳の記憶容量がいっぱいになってきます。
容量がいっぱいになると新しいことを覚えたくてもスペースがないので物覚えが悪くなってきます。
睡眠にはこうした記憶を別の場所に移動させる働きがあります。
新しい情報は脳の海馬という部分に一時的に保管されて、睡眠をとることで皮質と呼ばれる部分に移動します。
すると海馬の空きスペースが増えて新しい情報を入れることが可能になります。
脳内の老廃物を清掃
2019年2月27日付けの『Science Advances』に掲載されたロチェスター大学メディカルセンターの研究によって、脳内に老廃物を清掃するシステムがあることがわかりました。
このシステムは「グリンパティック系」と名付けられ、リンパ系が体内の毒素を排出するように、脳内の毒素を排出する働きがあります。
日中でもグリンパティック系は働いていますが、睡眠時には日中の20倍近くもの老廃物を除去してくれます。
簡単に清掃メカニズムを解説すると、睡眠中には脳細胞が小さくなって脳内に隙間ができます。
その隙間に脳脊髄液という、いわゆる洗浄液が流れて老廃物を除去してくれます。
日中、人混みであふれかえっている遊園地を閉園後に清掃員が一気に清掃するようなことが脳内で起こっているとイメージするとわかりやすいです。
では、もし睡眠不足でグリンパティック系がしっかりと働かなければどうなるのかというと、蓄積された毒素が脳を攻撃しだします。
しかも毒素の中にはアルツハイマー病の原因となるアミロイドβも含まれています。
さらに、オックスフォード大学の脳機能MRIセンターのクレア・セクストンによると脳の清掃が十分に行われない状態が続くと脳が委縮して小さくなると話しています。
逆に睡眠中にグリンパティック系がしっかりと働くことで病気や脳の老化を予防することができます。
最後に
今回は睡眠が脳に与える影響について紹介してきましたがいかがだったでしょうか?
正直なところ睡眠が与える影響は挙げればキリがないほどあるので、今回ご紹介できたのはほんの一部にすぎません。
他にも生産性、倫理観、幸福度、創造性、チャレンジ精神、ストレス軽減、免疫力、体型などにも良い影響があります。
あなたにも睡眠時間を削って勉強や仕事に取り組んできた経験があるかもしれません。
しかし、いくら眠たい目をこすりながら頑張っても記憶力や集中力、作業効率などは低下しています。
科学的に見れば勉強や仕事で良い結果を残したいのであれば睡眠を味方につけたほうが効果は絶大です。
ただ、「睡眠の見直し=睡眠時間を増やす」ではありません。
例えば今回ご紹介した記憶の定着を強化するには、深いノンレム睡眠に入る必要があります。
なんとなく睡眠時間を増やしただけでは安定して深い睡眠に入ることはできません。
睡眠は技術です。
質の高い睡眠を確保できる技術を身に着ければ、確実にあなたのパフォーマンスは見違えるほどにあがります。
タケラボでは睡眠の質を上げる方法についても詳しく紹介していますので、さっそく今日から始めてみてください!