加害者にとっても被害者にとっても、その後の人生を大きく変えてしまう自動車事故。
どれだけ気を付けて運転していても車に乗る限りは誰もが起こす可能性があります。
自動車保険はそうしたリスクに対応するために加入するものですが、補償内容を理解せずになんとなく自動車保険を契約しているという方は多いのではないでしょうか?
この記事では自動車保険の契約において、無駄のない本当に必要な補償内容の選び方から保険料を抑える方法について紹介していきます!
読み終える頃には、絶対に外してはいけない補償といらない補償がなんなのかがスッキリとしますよ♪
高い保険料を払っているにも関わらず、事故を起こしてしまったときに「こんなはずではなかった」とならないように確認しておきましょう!
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2つの自動車保険
補償内容の詳細に入る前に、自動車保険には次の2種類があります。
2つの自動車保険
- 自賠責保険(強制保険)
- 任意保険
自賠責保険は別名「強制保険」と呼ばれており、すべての車の所有者に加入が義務付けられている損害保険です。
新車を購入するときや車検とセットで申し込むようになっています。
任意保険とは、自分で保険会社や補償内容を選んで契約する損害保険です。
自動車保険と言えば一般的に任意保険を指すことが多く、自賠責保険ではカバーしきれない部分を補うための保険です。
そのため任意保険の補償内容を選ぶには自賠責保険の補償内容をおさえておく必要があります。
自賠責保険の補償内容を簡単にまとめると次のようになります。
自賠責保険の補償内容
- 補償範囲は対人賠償のみ(物を破損したりは対象外)。
- 被害者1名につき死亡で最高3,000万円。
ここではザックリと自賠責保険の保険範囲は対人賠償のみ、死亡による最高補償額は3,000万円の2点を抑えておきましょう!
※対人賠償が何なのかについては後ほど紹介します。
ポイント
- 任意保険は自賠責保険ではカバーしきれない部分を補う保険。
- 自賠責保険の保険範囲は対人賠償のみ、1名につき死亡で最高3,000万円。
自動車保険の補償内容と選び方
それでは任意保険である自動車保険の補償内容と選び方について紹介していきます。
まず結論からいうと、補償内容で必要な物と不要な物は次のようになります。
絶対に必要
- 対人賠償⇒無制限
- 対物賠償⇒無制限
つけておいた方が良い
- 対物超過修理費用の補償
- ファミリーバイク特約
- 弁護士費用特約
不要なもの
- 車両保険
- 人身傷害保険、搭乗者傷害保険
それでは順番に解説していきます。
◎対人賠償責任保険は無制限以外の選択肢はない!
対人賠償責任保険とは、自動車事故などにより、相手がケガや死亡をした場合に相手への賠償としてお金が出る保険のことです。
保険契約をするときには、対人賠償責任保険の金額を必ず無制限にしておきましょう!
正直なところ、自動車事故による対人賠償は自賠責保険の3,000万円ではまったく足りません。
高額賠償事案判例をいくつか載せておきます。(損保ジャパン公式サイトより)
認定損害額 | 性別・年齢 | 職業 | 損害 |
約5億2,800万円 | 男性・41歳 | 医師 | 死亡 |
約3億9,700万円 | 男性・21歳 | 大学生 | 後遺障害 |
約3億8,200万円 | 男性・29歳 | 会社員 | 後遺障害 |
約3億7,800万円 | 男性・23歳 | 会社員 | 後遺障害 |
約3億6,500万円 | 男性・14歳 | 中学生 | 後遺障害 |
このように対人賠償では、たとえ相手が死亡していなくても3億円以上の賠償責任を言い渡されることがあります。
たとえ任意保険で対人賠償5,000万円に入っていても自賠責保険と合わせて8,000万円。
残り2億円以上は自腹となるので、こうなってしまうと人生終了状態になってしまいます。
保険会社によっては最初から対人賠償は無制限しかつけれないところもあります。
それだけ自動車保険に入る上で、絶対に外してはいけない部分となります。
たとえ金額を設定できたとしても対人賠償責任保険の金額は無制限以外の選択肢はないと覚えておきましょう!
ポイント
- 対人賠償責任保険の金額は無制限以外選んではいけない
- 無制限以外を選ぶと人生を積む可能性がある
◎対物賠償保険も無制限以外の選択肢はない!
対物賠償保険とは、他人の財物に損害を与えて損害賠償責任を負担する場合に補償してくれる保険です。
例えば、他人の車と衝突して相手の車を壊してしまったり、ガードレールや信号機にぶつかって壊してしまった場合などに補償されます。
あとで出てくる車両保険との違いは、車両保険は自分の車、対物賠償保険は相手の車に対する補償となります。
対物賠償保険は自賠責保険の範囲外なので、任意保険に加入していなければ全て自費となります。
そして対物賠償保険も対人賠償保険と同様に無制限を選ぶようにしましょう!
それが対物賠償も人生を積んでしまう程、高額になることがあります。
高額賠償事案判例をいくつか載せておきます。(損保ジャパン公式サイトより)
認定損害額 | 被害物 | 事故状況 |
約2億6,000万円 | 積み荷 | 追突(高速道路) |
約1億1,000万円 | 電車 | 踏切内で列車に接触 |
約2,700万円 | 大型貨物車 | 玉突き |
約1,500万円 | 大型貨物車 | 追突 |
約1,200万円 | 乗用車 | 出会い頭 |
高速道路でトラックに追突して積み荷に損害がでたときの損害賠償額が2億6,000万円。
対物でも対人と変わらないレベルの損害賠償責任を負うケースがあります。
衝突する物は選べませんし、衝突する物次第で人生を積みかねないので、対物賠償保険も無制限以外の選択肢はないと覚えておきましょう!
ポイント
- 対物賠償責任保険の金額は無制限以外選んではいけない
- 無制限以外を選ぶと人生を積む可能性がある
〇対物超過修理費用補償で余計なトラブルを防止
先ほど紹介した対物賠償保険には一つだけ落とし穴があります。
対物損害保険を無制限にしていても修理費の全額が補償されないことがあります。
理由としては、対物賠償保険で補償されるのは修理費用か車の時価相当額のうち低い方までとなっています。
メモ
時価相当額とは、車などの現時点における市場価格のことを言います。
なぜ時価相当額しか保険金がでないかと言いますと、法律で加害者が被害者に負う損害賠償責任は時価を限度とすると決まっているからです。
この時価問題は事故を起こしたときによくトラブルになっています。
例えば、あなたのよそ見運転によって停車中の車に突っ込んだとします。
突っ込んだ相手の車の時価が50万円で修理費が80万円する場合は、50万円までしか被害者には支払われません。
被害者には全く非がないにもかかわらず、被害者は30万円を負担しなければいけなくなります。

そこでこれを補うための補償が対物超過修理費用補償です。
対物超過修理費用補償に入っておくと、被害者の時価と修理費の差額の一部が補償されるので被害者が泣き寝入りするといったことがなくなります。
「法律で損害賠償責任の限度は時価までと決まっているから俺は入らないよ!」という方や、差額分は貯金を崩して払うからいらないという方もいるかと思います。
そのため必須項目からは外しましたが、個人的には入っていても良いかなと思います。
〇弁護士費用特約で泣き寝入りを防止
弁護士費用特約とは、弁護士が必要となった時に一定額(保険金額によって違う)を上限として費用を負担してくれる特約のことをいいます。
なんだか弁護士と聞くと自分には関係ないように感じるかもしれませんが、意外とお世話になる可能性は高いです。
弁護士特約が役立つケースをいくつか紹介しておきます。
事故を起こした相手が保険未加入
事故を起こした場合、基本的には双方の保険会社が間に入って交渉してくれますが、相手が自動車保険に未加入の場合は自分で交渉しなければなりません。
このような場合は損害賠償請求をしても相応の金額がすんなりと支払われないケースがあります。
こうした時に泣き寝入りしないためにも弁護士特約は役立ちます。
自分にまったく過失がない場合
過失割合が100対0で、自分にまったく過失がない場合には保険会社が間に入って交渉できないようになっています。
つまり、自分はまったく悪くないのに自分自身で相手と交渉しなければいけません。
相手が非を認めて納得いく金額を支払ってくれれば問題はないのですが、相手がなかなか納得せず交渉が決裂した場合には余計な手続きを強いられることになります。
こうしたケースでも弁護士費用特約に入っておけば費用を気にせずに弁護士に依頼することができます。
他にも加害者が決まった示談金を払わない場合や、保険会社の交渉に納得のいかない場合などにも弁護士費用特約は役立ちます。
年間3,000円前後で入れるので、余計な手間や泣き寝入りを防ぐためにも個人的には入っておいても良いかと思います。
〇ファミリーバイク特約で保険料をお得に(対象者のみ)
家族の誰かが125cc以下のバイク(原付バイク)を運転するのであればファミリーバイク特約はお得です。
ファミリーバイク特約とは原付バイクの事故により自分がケガをしたり、対人・対物賠償を補償してくれる特約です。
バイク単体で別の保険に加入するよりも、自動車保険に特約としてセットで入った方が料金が安く済みます。
当然ですが原付バイクを持っていない家庭であれば入る必要はありません。
ポイント
- 原付バイクを持っている家庭限定
- バイク単体で保険に入るよりも安く済む
✖車両保険は不要
車両保険とは、保険契約している車が衝突などによって損害を受けた場合に、その修理費用などを補償してくれる保険のことです。
つまり、対物賠償保険とは逆で、自分の車の損害に対してかける保険になります。
しかし結論からいうと車両保険は不要です。
理由としては次の3つです。
車両保険がいらない理由
- 家計破綻リスクではない。
- 保険料が高い。
- 利用すると損をする場合がある。
それでは順番に解説していきます!
家計破綻リスクではない
自動車保険に限らず、基本的に保険は家計破綻リスクに備えるものです。
家計破綻リスクとは、めったに起きないことが起きてしまった時に多額のお金が発生して家計が破綻するリスクのことです。
例えば、先ほど紹介した対人賠償や対物賠償のように、億単位の賠償責任を負ってしまうと一般的には自分ではどうにもできずに家計が破綻します。
対人賠償や対物賠償のように家計破綻リスクを抱えているものには保険をかけて、家計破綻リスク以外の費用に関しては貯金で支払うというのが上手な保険の使い方になります。
そして通常、自分の車の修理費用は家計破綻リスクではありません。
もし自分の車が廃車になって生活が困窮するような事態になるのであれば、そもそも車を持つべきではありません。
あくまでも車は贅沢品ですので、自分の車の修理費用は貯金でまかなうようにしましょう。
車両保険は保険料が高い
自動車保険を節約したければ一番に見直さなければいけないのが車両保険に入るかどうかです。
車両保険が補償するリスクはそれほど大きくないにも関わらず、車両保険をつけるだけで保険料が約2倍近く高くなります。
またこのあと紹介しますが、車両保険は値段が高い割に使い勝手が悪く、利用する機会はほとんどありません。
車両保険を利用すると損をする場合がある
自動車保険にはノンフリート等級制度というものがあります。
ノンフリート等級制度とは、年齢や過去の事故歴などによって運転手を20段階(1等級~20等級)でランク分けしている制度のことです。
等級が高いほど優良運転手とみなされて保険料は安くなります。
※画像出典:SBI損保公式サイトより
始めて保険契約するときは通常6等級から始まって、1年間保険を使った事故がなければ次年度は等級が1つ上がります。
逆に事故を起こして保険を使うと次年度は等級が1~3つ下がります。
例えば、車を擦ってしまったり、ぶつけて凹ませてしまった場合などに車両保険を使うと、次年度から等級が下がります。
さらに事故歴有の割引率が適用されるので、通常の等級よりも高い保険料を支払わなければいけません。
つまり、下手に車両保険を使ってしまうと次年度から保険料が上がってしまい、修理費用以上に損をする可能性があります。
このように車両保険は、補償対象のリスクはそれほど大きくないのに保険料は高く、いざ使おうとすると使い勝手がとても悪い保険です。
以上のことから車両保険は不要です。
✖人身傷害補償保険、搭乗者傷害保険は不要
人身傷害補償保険とは、自分や同乗者が事故によりケガまたは死亡した場合等に支払われる保険金のことです。
搭乗者傷害保険も人身傷害補償保険と補償内容はほとんど同じで、人身傷害補償保険だけでは足りない部分を補ってくれる保険です。
そのため搭乗者傷害保険は人身傷害補償保険のオプションとして加入するものになります。
対人賠償保険が事故を起こした相手への補償に対して、人身傷害補償保険と搭乗者傷害保険はこちら側の補償になります。
そして、人身傷害補償保険は基本補償として自動付帯している保険会社が結構多いです。

いや、基本的に人身傷害補償保険と搭乗者傷害保険は必要ありません。

いらない理由はおもに次の2つです。
いらない理由
- 他の保険と重複しやすい
- 公的保険等でカバーできる
一つ目の「他の保険と重複しやすい」ですが、死亡した場合には生命保険、ケガをした場合には医療保険などと内容が重複する場合があります。
また、2つ目の公的保険等でカバーできるについてですが、人身傷害補償保険の補償内容は公的制度によって大方カバーできます。
死亡すれば遺族年金、高額な医療費が発生すれば高額療養費制度、障害が残れば障害年金などがあります。
またサラリーマンであれば休職期間中も傷病手当によって給料の約3分の2が最高1年半にわたって支給されます。
それに相手がいる事故であれば、相手からの損害賠償が入ってくることも考えられるので人身傷害補償と搭乗者傷害保険は必要ありません。
ただ、先ほども紹介したように人身傷害補償を基本補償として自動付帯している保険会社は結構多いです。
その場合でも補償金額は選択できるようになっているので、必要最低限のものを選んでおきましょう。
無駄のない運転者条件の選び方
これは補償内容ではないのですが、自動車保険を契約するときには運転者の範囲と年齢条件を選択する必要があります。
一般的には次のようになります。
運転者の範囲
- 本人
- 夫婦
- 家族
- 制限なし
当然ですが、運転者を限定するほど保険料は安くなります。
そして運転者の範囲を決めたら、その中で何歳以上の人に補償をつけるかを選びます。
運転者の年齢条件
- 全年齢
- 21歳以上
- 26歳以上
- 36歳以上
年齢についても多くの年齢層をカバーするほど保険料は高くなります。
意外と見落とされがちなのが、運転者の範囲と年齢条件はいつでも変更可能です。
もし普段は本人しか車を運転しないけど夏休み期間中だけ21歳の息子が運転するような場合、多くの方が次のように保険に入りがちです。
保険期間中ずっと
- 運転者の範囲・・・家族
- 年齢条件・・・21歳以上
ただこれだと、息子が車を運転する夏休み以外の保険料が無駄になります。
このような場合は、まずは本人限定で保険契約を結んで、夏休み期間中のみ上記条件に変えることで無駄をなくすことができます。
ポイント
運転者の範囲と年齢条件はいつでも変更可能
自動車保険は相手の補償を手厚くするのがポイント
自動車事故によって家計破綻リスクがあるのは相手への賠償責任のみです。
自分への死傷リスクについては公的制度と掛け捨ての生命保険の組み合わせでカバーできるので、わざわざ自動車保険で手厚くする必要はありません。
そのため、自動車保険の補償選びのポイントは相手への補償は手厚く、自分への補償は最低限に抑えることです。
保険会社によってさまざまな特約がありますが、迷った際には自分への補償か相手への補償かを考えて入るかを検討しましょう!
ポイント
- 相手への補償は手厚く
- 自分への補償は最小限に
保険料を抑えるなら見積もり比較は忘れずに
自動車保険を節約したいなら、複数の保険会社で見積もりを取りましょう。
実は同じ補償内容でも、保険会社によっては運転者条件で割引率が変わります。
例えば次のようなイメージです。
本人限定(割引率) | 夫婦(割引率) | |
○○会社 | 6% | 5% |
△△会社 | 5% | 6% |
この割引率はちょくちょく変わるので、保険に入る際には複数社で見積もりを忘れずにとりましょう!

一括見積サービスを使うと5分~10分で複数社の見積もりが取れるので便利です。
一括見積サービスはたくさんありますが、私はいつも「インズウェブ
インズウェブの場合は、見積依頼をするとすぐに結果が見れるのと、営業の電話もかかってこないので利用しやすいです。
ちなみに私のお気に入りの保険会社は次の3社です。
おすすめ保険会社3選
- ソニー損保
- チューリッヒ
- セコム損保
3社とも事故対応と価格のバランスが良い保険会社なので、一括見積りをとって上記保険のうち安い物を選ぶようにしています。
私の場合は過去に一括見積りを利用して、同じ補償内容で2万円安くなったことがあります。
ほんのひと手間かけるだけで大きく節約できる可能性があるので、保険を契約する際は複数社見積りをとるようにしましょう!
まとめ
長くなりましたがここまで本当にお疲れさまでした。
いろいろ説明をしてきましたが、自動車保険で絶対に抑えておかなければいけないのは対人・対物賠償補償を無制限にすること。
まずはここさえ抑えておけば家計破綻リスクは防ぐことができます。
そして自動車保険には今回ご紹介した補償以外のものもありますが、基本的には「相手の補償は手厚く、自分の補償は最小限に」を基準に検討すれば大丈夫です。
保険は人生で高い買い物トップ3の1つなので、安心だからという理由で何でもかんでも加入するとお金はドンドン無くなっていきます。
本当に必要な保険と補償内容を知ることで、必要最低限加入するようにしましょう!
タケラボでは他の保険についても「節約・節税カテゴリ」内で紹介していますのでよければご覧ください。